福岡高等裁判所 昭和59年(う)10号 判決
所論は要するに,原判決は,被告人がジャスコ祇園寮の玄関から屋内に入り2階の島田英治の居室出入口まで至ったことをもって,人の住居に侵入したというのであるが,右寮は誰でも自由に出入りできる状態にあったものであり,その2階通路部分までは人の住居ではないというのである。
しかし,本件祇園寮は旅館目的で建てられた建物であって,これを福岡ジヤスコ株式会社が独身男子寮として借り受けているものであるが,玄関にはガラス戸があり,施錠設備もあって,ふだんは施錠されていないものの,玄関を入ると土間があり下駄箱が設けられていて,住人及び来訪者はここで履物を脱いで板の間に上ることになっており,1階に7部屋,2階に8部屋があってそれぞれ廊下から出入りするようになっているところ,右寮の管理者は同社佐世保店長宇都宮悟であり,その下に総務課長大谷周一が管理事務に当っており,また寮母藤瀬晶代がときどきやってきて掃除をしているほか,当時12,3名の住人の中から山本恭久が寮長に選ばれているが,入居者はすべて同社佐世保店の独身男子社員であることが認められる。
右事実によれば,右建物は同店の独身男子社員が起臥寝食の場所として日常生活をいとなむために使用している場所であって,その平穏は保護されるべきであり,前記1,2階の各室はその住人の住居であり,その余の屋内部分はその付属部分で,住居の一部であると解するのが相当である(仮に,住居を狭く解する見解に従うとしても,少なくとも本件建物は人の看守する邸宅もしくは建造物に該当する。)。